地理学コース 宇津川喬子(自然地理学・堆積学)
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地圏と人間圏

地球の大きさを考えると,私たちの生活圏がいかに地球の表層も表層に過ぎないかわかると思う.私は,地球上の陸域(⊂地圏)のうち,河川~海岸に広がる地形の発達過程やそこに住まう人々の環境(⊂人間圏)を地理学の視点で捉えたいと研究している.
特に河川地形は,今日広く生活圏として利用されているため自然災害とも関連が強い.凄まじい自然の営みが生み出した地形を「間借り」して生活していることを私たちは忘れてはいけない.
砂礫とかたち

誰しも一度は河原や海辺で石を拾ったことがあると思う.2mm以上の石を「礫」という.砂や礫は「雄弁」だ.例えばかたちを見ると,最初角張っていた砂礫も運搬中に丸みを帯びていき,途中で破砕したらまた角張る.
かたちを変えながら自分自身のサイズを小さくし,同時により小さな粒子を生産している.この過程を捉えることは,地形発達への理解に繋がる.岩石の種類や粒径によっても異なるので複雑なのだが,これがまた面白い.
本来の河川の姿

『方丈記』が好きだ.川をゆく水はもとの水ではない.確かに.私たちはダムに河川の水を貯め,用水から水を得ているが,今の河川は本来の力が著しく削がれた姿だとどれほどの人が認識しているだろう.
河川が「増水」した直後の河原に行くと,普段は動かない人間の頭部ほどの礫が同じ方向(=上流側)を向いて転がっていたりする(上の写真では,左から右方向に流れたとわかる).河原上に再堆積した砂礫の分布や微地形を調べることは,かつて地形を形成していた頃の「本気の」河川の姿を知る手がかりになるのだ.
地層と堆積環境

私は地層中の礫や砂にも「君はどこから来たのかい?」と尋ねる.どこかで削られ運ばれ堆積し,私に見つかるまでに何があったのかを粒子の特徴から考える.地層の「堆積相」も大切だ.礫質か砂質か泥質か,堆積構造は…etc.
砂礫の運搬経路や堆積当時の環境がわかると,現在の地形とは異なることがある.複数の地点から,面的に過去の地形を捉えることは,かつての地理(=古地理)を知ることにも繋がる.それはさながら「推理」である.
海岸侵食と海岸景観

海岸侵食は生活圏を脅かすこともある.けれどその対応のために,国内外問わず海岸の景観が無機質になろうとしている.私が調査した南国のリゾート・ニューカレドニアでも,コンクリートで固めたり,離岸堤を並べようとしたり.並木の下で行き交い,芝生の上で足を伸ばしていた地元住民と観光客の姿も移ろわざるを得なくなった.
その海岸に「らしさ」はあるだろうか.その地域の風土あっての海岸景観が残されるように,そもそもの海浜を知るための研究を始めている.