人間科学科教育学・人間学コース 小野寺香(比較教育学)
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世界の学力
近年、特に90年代以降に顕著になった社会・経済のグローバル化の影響によって、教育においても、人や情報やサービスが国境を越えて移動するようになってきました。そして、教育の在り方は国境を超えて一元化の方向に向かってきています。
例えば、学校教育をとおして生徒がみにつける力について、国家・地域をこえた検討をとおして共通の定義がなされ、学校教育のカリキュラムも国家・地域間で類似点がみられるようになってきています。そして、例えば、日本の高校教育のカリキュラムにある「総合的な探究の時間」に相当する、総合学習をとおしてみにつける能力は重要であるという認識は、日本においても海外においてもおおよそ共通しています。ただし、そのカリキュラム上の位置づけや実践のありかたは国・地域間で異なると言われています。
中国の総合学習

中国でも、そうした世界の学力観の影響を受けながら学力の再定義がなされ、高校での総合学習の充実化が図られています。その学習をとおして、語文、数学といった各教科学習で得た知識を結びつけて社会課題の解決に挑む経験をとおして、社会の要請に対応する力を向上させることが求められています。
中国の高校の総合学習のカリキュラムは、探究学習の方法(調査、実験、文献等)について理解を深めたうえで、生徒自身が自然、社会、学校生活の観察を通して関心をもつテーマを設定し、問題解決をめざして学習をすすめます。
高校での実践

中国では、総合学習を充実させるために、地方レベルでカリキュラム設計されています。また、他にも様々な仕組みがあります。
例えば、総合学習の成果について校内および地方政府によって報告会や表彰を実施し、学校内外の複数の場で成果を発表し様々な立場の参加者からフィードバックを得ることで、学習の質的向上や生徒の士気向上が図られています。また、総合学習の指導状況について教員が評価を受ける仕組みをもつ学校もあります。
大学入試制度

さらに、学校での総合学習の充実化のため、大学入試制度改革もすすめられて新たな入試もはじまりました。全国統一筆記試験の成績に加えて、学校での総合学習の成果を選考にあたって参考にするものです。
ただ、中国では、政府が強くかかわり規範化された全国統一試験を中心に大学入試が行われることで、その公平性の確保や質の維持が目指されると考えられてきました。そのため、新たな入試が実質的に広く実施されているとはいいきれない状況にあります。
これからの見通し

これから、国家や地方政府レベルで設計されるカリキュラムだけでなく、総合学習が中国の学校においてどのように計画されているか、教師によってどのように実践がなされ、学習者はそれをどのように経験しているかという観点からも、現地調査を通して中国の総合学習を考察していきます。